たまには毛色の違うエントリを書いてみる。北方謙三著の歴史小説。中国の宋の時代の軍閥、楊一族の物語。
楊家将という物語は、中国ではかなりメジャーで、三国志や水滸伝に並ぶものらしい。ただ、中国ではこの物語は、楊一族に嫁いでくる女性がみなことごとく強く、女将軍となって戦場を疾駆する物語らしいのですが、北方版楊家将では楊家の女性はほんの少ししか出てきません。また、中国では楊業から5代(6代だったかも)に渡る一族の物語なのですが、北方版では楊業とその息子達、と2代までしか出てきません。といった感じで、本場の楊家将とはかなり違う物語になっている模様。楊業の死に様なんかも、俺が知ってるのとは全然違うし。
いや、本場と違うからダメだってわけではなく、その逆です。俺は映画や小説は男同士の熱い関係が描かれているものが好きで、男女の関係なんて不要、と思ってるんですが、この小説はそんな俺の嗜好を存分に満足させてくれます。父と息子、兄と弟、皇帝と家臣、男と男の友情、無能な味方と有能な敵、そんな男同士の熱い関係が満載。
特に楊家の頭である親父・楊業がいい。楊一族は楊業だけではなく、その七人の息子すべてが用兵家として一流なわけですが、楊業はその中でも一人次元が違う強さ見せつけ、その戦いっぷりが見事で心地いい。さすが、親父の貫禄。
そして、敵国・遼最強の軽騎兵を率いる「白き狼」耶律休哥。こいつがまた強くて、楊業の息子達は太刀打ちできないわけですが、その耶律休哥すらも手玉にとる楊業親父。いかしてます。
しかし、本場の楊家将では、最後は遼に捕らわれて非業の死を遂げてしまいます。たしか、捕らわれてしまい憤怒のため、岩か何かに頭をうちつけて自決する、という、何とも歯切れの悪い最期だった様な気がします。北方版でもやはり、最期は死んでしまうわけですが、最後の最後まで親父の強さを見せつけてくれます。ほんと、ラストの親父の戦ぶりの見事さは、鳥肌モノですよ。
北方謙三って、「俺ってカッコいいだろ」的なニオイがして、どうも好きになれないし、ハードボイルドものも興味ないので、読まず嫌いだったわけですが、この人の歴史小説は読んでみると最高におもしろい。歴史小説が好きな方、三国志や水滸伝は知ってるけど、中国の他の時代の小説は読んだことがない、という方にはオススメです。(北方氏は三国志、水滸伝の小説も書いてたりする。)
あと、俺の様に「北方はかっこつけ野郎だから嫌いだ」という人は、ぜひ西原理恵子の「できるかな V3」を読んでみてください。女体盛にかぶりつく北方氏が拝めます。(しかも葉巻くわえたまま。)氏に対するイメージが変わります。